2008年7月31日木曜日

ツバメと少年

生まれてこのかた病院はおろか、
病室の外にさえ出たことがない。
ボクに与えられた世界は窓の外の
リハビリ用の広場だけだった。

ボクも今年で16歳になる。
10歳までしか生きられないと
母は宣告されたらしいが、
以外と長く生きられるものだな。

でも、この状態で、
ベットからも降りられない状態で、
後どれくらい生きるのだろうか。
それならばいっそのこと
魂となって
窓から抜け出したい。
そんなことを日々考え続ける中で、
ボクは一匹のツバメと出会った。

「やあ、君はボクが気づいたときから、
ずっとそこに寝そべっているね。」
「やあ、ボクは君のように自由に飛び回れないのだよ。
ずっと、このベットに釘付けさ。」
「それはもったいないね。世界はこんなに広いのに。」
「できることなら、ボクも羽ばたきたいのだけれどね。」
「・・・ならボクが連れて行ってあげるよ。」
「ありがとう。でも君にはボクは大きすぎるから。」
「う〜ん、そうだなぁ。なら、君が骨になったとき、
ボクが君を世界へ連れて行ってあげるよ。」
「本当かい?約束だよ!」

それから、いくらか経ちボクは骨となった。
ボクが次に目を開けたときは青い海が広がっていた。

「やあ、気がついたかい?君は足の骨だよ。
いま海をこえて南へ向かっているのさ。」

「やあ、気がついたかい?君は腕の骨だよ。
いま高い山々をこえて東へ向かっているのさ。」

「やあ、気がついたかい?君は胸の骨だよ。
いま街をこえてへ西向かっているのさ。」

「やあ、気がついたかい?君は頭の骨だよ。
いま病室を抜けたところさ。いま北へ向かっているのさ。」
「今回はずいぶんと近くなんだね。」
「ああ、アレが君の家だよ。」
「家って?」
「まあ、僕らで言うところの巣だね。」
「なら、ボクの巣は病室だよ。」
「いいや、アレは体のいたところだよ
心のいたところは家族のいる家だよ。」
「家。写真でしかみたことが無かったな。」
「ほら、あそこに君の両親がいるよ。」

そこには母がいた。
泣いていた。

父もいた。なにやら転勤転勤を繰り返し、
年に数回しか合えない他人のような人だ。
そのとき父がふと窓の外に目をやった。
こちらと目が合った。

「あのツバメめ!又きやがった!
もう骨は渡さないぞ!」

父は投石を繰り返し、
その中の一つがツバメの頭にあたった。
ツバメは花びらのように舞い、
地面へボクと一緒に落ちていった。

転がったボクの目の先には、
頭のひしゃげたツバメが横たわっていた。

ボクはツバメの傍らに寄り添い、
ツバメの頭となり、
彼の家族のもとへと飛び立った。

ボクはつばめ家族のもとにつくと一言こういった。
「ばぁ〜ぶゅ〜ぷぷぷ〜ん。」
「?」

2008年7月28日月曜日

夏本番。



夏子は性格もよくスタイルも抜群。
男からだけでなく女からも慕われている。
非常に面倒みもヨク
家族に優シク
道端デ困ッテイル人ガイタラ
「ドウシマシタカ」ト声ヲカケ
座席ヲユズリ
海ヲコヨナク愛シ
ウィキペディアノ
飢餓ノページヲ更新シ
平和ノページヲ閲覧シ
ガソリンガタカケレバ
自転車デ移動シ
道端ノ草ヲタベ
ドブ水ヲススリ
着ル服ハ無ク
住ム家モ無ク
人ヲ敬イ
イトオシク思ウ心ハ無ク 
ユメハナク
人ガ不幸ニナルコトヲノゾミ
オオクノ不幸ナ言葉詩集ヲ綴リ
ソノ中ノ1ページガコノ写真ダ。

流線形'80

「以上!卒業生代表!やまだ!」
「はい!」

日本最大のモンスター高校であるユーミン学園は、
卒業生の9割が測量会社へ就職を行う。

「いろいろ測量をしてきた3年間。
20センチ以内の道具を用いて測量を競った
秋の運動会での思い出は、50M測量、障害物測量
借り物測量など20センチの限界へ挑戦しました。
音楽会では、音符を測量しそのサイズを譜面に記入し、
寸法により音階と音符を把握し演奏しました。
弁論大会では、「測量と自分」で全国大会に行きました。
クリスマス会では、サンタを測量し、
適した煙突の高さと直径を計算しました。
水平垂直は得意なのですが、
流線形が苦手なボクは、
80年に卒業したクラス「ミクロン」の伝説に習い、
肉眼で測量するのではなく、顕微鏡を用いるようになりました。
1センチを把握するのに3時間以上かかるのですが、
なにかこんなに細かくはかったぞ!という達成感があり、
より測量に没頭するようになりました。
私の尊敬する測量士の言葉があります。
「Experience is the name every one gives to their mistakes.」
測量がなくしてこの世はない、この言葉よりも好きな言葉が、
「あの女のために残しておいた力なのに!」
これはもののけ姫のエボシ様の言葉です。
ボクも卒業に当たり最後の力を振り絞り、
あの女、つまり恋心を抱いている女性に、
この場を借りて告白しようと思ていた力を、
嫌いな先生への別れの言葉に当てたいと思います!

「そなたの中には夜叉がいる。」

警部!急いでください!
わかった!40秒で支度する!
お願いします!
家を飛び出した警部は、
今日も事件解決へと全力を注ぐのでした。

2008年7月26日土曜日

「お犬様になんて事を!そやつの首を切ってしまえ!」
「ひえ〜、お、おたすけ〜。」

また今日も町民の首がはねられた。
この首により、100個の首が川沿いに山積みとなった。

「老犬様のお通りだぁ!皆のものひかえひかえいぃ〜!」

わぷわぷとよろめきながら歩く老犬様に、
童が無邪気に近づいてしまった.

「ここここぅにょぉ!無礼者めが!!!首をはねてしまえ!」

命令により、刀を抜いた数人の随員が童に駆け寄る。
ひれ伏した群衆の中から老婆が飛び出し童を抱きかかえ懇願した。

「童のした事です!童のした事です!どうかお許しください!」
「うぬぬ、許されるものか!ええ〜いどかぬか!どかぬなら御前ごとごとたたき切ってやる!」
「お許しください〜〜!」

刀が振り下ろされた。そのときだった。

「わふ!」

「ままま、待て!老犬様が!しゃべられたぞ!!刀を控えい!」

付き人たちが老犬様の前に集まりひれ伏した。

「老犬様、如何致しましたか!」
「童なんだ。そのような振る舞いを行うでない!!」

随員たちは一様に顔を見合わせ驚いた。


「しゃべったぞ・・・・。」

2008年7月25日金曜日

ボクの濃い心

一目あったその日から
濃いの花咲くこともある

365日、毎日繰り返される通勤の中、
今日だけは違った。

3つ目の駅で乗り込んできた彼女、
周りを切り裂くモーゼのようだった。

極彩色の花で彩られ、アメフトのように肩パットのきつい
スーツを身にまとったモーゼは、
まるで70年代から抜け出してきたようだった。

モーゼと目が合った瞬間、
ボクの濃い心が芽生えた。


「!?どぎっついな〜〜!」


モーゼは二つ目の駅で降りていった。

2008年7月15日火曜日

もんまり



「お〜っと!
4番の北島さん、かなりのもんまりっぷりだぁ〜!」

100回を記念する「もんまり大会」は、
開催地である日本過去最高の89ヶ国が出場した。
昨年度優勝国のアメリカはもちろんだが、
大方の予想を裏切りなんと日本が決勝まで駒を進めた。

あまり認知されていないが、剣道や柔道と肩を並べる
日本の伝統競技であるもんまりは、
いまでは海外の勢力におされ、
54回目の大会を最後に日本は決勝まで勝ち残っていなかった。
46年ぶりの決勝進出ということで、日本で密かな盛り上がりを見せている。

まばらに埋められた客席のまなざしの先は、
10本のトラックにならぶもんまり精鋭たちだ。

スターターに足を固定し選手は一様に、
スタートのもんまりに目を耳をこらしている。
固唾をのんでもんまりを見極める北島さんは、
他の選手よりももんまりとしている。

もんまり!

審判のもんまりに一斉に選手がもんまりしはじめた。
やはり優勝国アメリカ、もんまりっぷりが違う。
だが北島も負けていない。
門馬利社(もんまり)のもんまりに身を包み、
アメリカにも負けないようなもんまりをみせている。

「1時間経過!クロアチア優勢!」

審判の声が会場の空気を切り裂いた。
思わぬ伏兵のクロアチア。
身体能力の高いクロアチアも近年上位に食い込んできている。

「も〜んまり!も〜んまり!」
「モ〜ンマリ!モ〜ンマリ!」
「mo〜nmari!mo〜nmari!]」

各国のサポーターがコールを送っている。

「3時間経過!アメリカ優勢!」

中盤でアメリカが盛り返してきた。

「うつくしい・・・・!」
「ビューティホー!」

北島がきた。すごいもんまりだ。
みぎてみぎあし、ひだりてひだりあし、
まつげの先まで美しくもんまりしている。

大会委員長が席を立ち上がり叫んだ。
「もうもんまりにはウンザリだ!いまからまんまりにしてくれ!」

どよめく開場、審判、選手のなかで、
北島だけはまんまりに柔軟に対応した。

記載された一枚の絵は、
かつて明治時代後期に全盛期を迎えた
100回大会の優勝者北島選手である。

このもんまりは、
障害物競走に名を変え
伝統がいまも引き継がれている。

よわインク登場!



エポケー社が10月17日、新開発の顔料系/染料系インク「よわインク」を発表した。A4インクジェットプリンタ4機種と、複合機1機種、ダイレクトプリント機1機種の計6機種で使用可能なこのインクは、耐光性、耐水性、耐ガス性など保存性が従来品に比べ飛躍的に劣り、モノクロ印刷にしか対応していない。インクの目詰まりも多々起こり、3枚印刷できれば良い方だという。

消費者の声として、
「4枚印刷できた。うれしい!」
「色合いも悪く、クウォリティを気にしないため気が楽だ。努力しても無駄。」
「印刷して手を触れたらインクがにじんだ。書類を大切に考えるようになった。」

と、よわインクはメンタル面によくのるようだ。

ジョンビージャンピョン!



お魚になったおじさんは、
車に乗って子供の頃へ帰りました。
でも車は、富士山の頂上で
ガソリンがなくなり、
ポテトチップスを敷き詰めて、
滑り落ちていきました。

その惰性で、
高校時代には帰ることができたのですが、
幼魚までには帰れませんでした。

あとは泳いでいくしか無いな。

気がつくと、
兄弟と一緒に、
お父さんの口の中にいました。

懐かしいこの場所は、
握りつぶされそうになって、
飛び出したのを
思い出しました。

2008年7月13日日曜日

それは・・・本当か?

「じゃあなんだ!?
俺が盗んだとでも言いたいのか?」

ボクの怒りは頂点に達した。

「でもあなたしかその場にいなかったじゃないですか!
それに、なんだかそんな雰囲気も漂わせてるし・・!」

定員の冷ややかで見下した目線は、
ボクのつま先から顔までを往復した。


「盗むはず無いだろ!
まず、好みのデザインじゃない!
ピンクを基調として英字がプリントされているデザインなど、
この年で選ぶはずが無いだろう!
さらに、胸元の大きく開いたタンクトップなんだぞ!」

「でも〜。とりあえず警察に行きましょうか。」

「あぁ〜〜!普通に考えれば分かるだろ!
今のワタシの格好はスーツだ!それにヴァレンティノだぞ!
このようなものを身につける人間がこんなものを盗むか!」

「ああ、警察ですか?角の服のショップなんですけど、
万引犯を捕まえたので来ていただけますか〜?」

「ちょっと待ってくれ!違うといってるだろう!」
「もうすぐ警察がきますのでそこで説明してください。」


「万引犯を捕まえたと連絡があったのですが〜。」
「あ、この人です。」
「違うと行ってるだろう!!!!
おまわりさん聞いてください!
ボクがこれを盗んだと言いがかりをつけられているんです!」

そよ風が吹く美しい高原には、
今日も小鳥がさえずり女の子が羊と散歩をしている。

2008年7月11日金曜日

チョコバナナお待たせしました〜。

あ〜、腹減ったな・・・。
この辺は飲食店はないけどケーキ屋がやけに多いな。

え〜っと、ル・モンド、フォーブル、ラグザ、パ・シュ・ビコンテ、ボラーズム・・・。
これだけあると、一軒一軒リサーチする訳にいかないからか、どこがおいしいとか考える事自体ナンセンスだな。

・・・・・ど・こ・に・し・よ・・・・いや、古い古い。
斬新な選択方法があるはずだ。

・・・!?・・ケーキのおいしいところ?・・・・・
いやいや、それが分からないから考えてるんだった。

・・・・・濁点があると強そう・・・全部あるな・・・。

・・・・・紅茶のおいしい・・・・・喫茶店か・・・・。

人に聞くかな・・。
すみません、この辺りのケーキ屋で一番おいしいところはどこですか?
・・・・・・・・。

よし、こんな感じで声をかけよう!

と、いう気軽さで行かなくちゃな!
と、いう性格を持ち合わせていたらな・・・。
と、いじいじする性格はなおらないな・・・。
と、もうだめだとすぐに考えてしまう・・・。
と、立ち直ろうとする心はみじんも無い・・。

と、いうことでいま自殺しようとしていたんだったな。



と、ここまで考える人はいないだろうな〜。
あのピンクの看板がかわいいから、あそこにき〜めた!


と、かいま見た夢は真っ赤に染まった。


と、
と、
と、
と、


ト〜トトトットト〜!コケッ!
ボクニワトリ!ヨロシクネ!

2008年7月10日木曜日

太陽とスイカ 上

彼女とであったのは
これから訪れる夏にげんなりしていた頃だった。
特に暑かったその日は
生徒だけでなく教師さえも集中力が切れてしまうほどであった。

「おい・・・谷町・・授業中に寝るんじゃない・・・。」
注意を促す教師の声は暑さをすり抜けてボクの耳にかすかに届いた。
(めずらしな・・優等生の谷町が・・・)
校庭に投げっ放していた視線を
教室の谷町に向けた。赤い。

うつぶせになった谷町の机から赤い血が
しとりしとりと床に落ちていた。

「せ、先生!た、谷町が血を流してます!」
暑さが吹き飛びどよめく教室。
教師が目を見開いて谷町のもとへと駆け寄る。

「た、谷町!大丈夫か!」

肩を揺り起こし顔を覗き込む教師。
かすかな声で答える谷町の鼻から下は
薔薇のように染まっていた。

「だ、大丈夫です・・き、気分がとても悪くて・・・」
教師が肩を支えていなければ
すぐにも崩れてしまいそうなその体に
ボクは女性の美しさを感じていた。

「おい!誰か谷町を保健室へ連れて行ってくれ!
そうだ!片山!お前保険委員だったな!たのんだぞ!」
「えっ・・・」
「え、じゃない、早く肩を支えてやってくれ。」

クラスメイトが赤く染まった彼女の血を拭き取り
教師がボクの肩へ谷町を託した。
華奢な女の子といえど、力のない人間はひどく重く感じられた。

「じゃあ頼んだぞ!」
ボクは谷町を支えながら保健室へと歩き出した。

谷町のことを特別どうのこうの思ったことは無いが
このシチュエーションはボクの心をときめかせるには
十分すぎる出来事であった。

「片山君・・・ごめんね迷惑かけちゃって・・・。」
「い、いや・・別に・・・でも、た、大変だな・・・大丈夫か?」
「うん、私・・・体がそんなに強い方じゃなくて
子供の頃はすぐに体が疲れちゃったの・・・。
お母さんに気をつけなさいって言われてたのに・・・・。」

何も返すことの無かったボクは
保健室までつく廊下が遥かに遠くに感ぜられた。

太陽とスイカ 中

「後もう少しだよ谷町。」
「あ、ありがとう・・。」

日差しであたたまったスチールの扉を片手でなんとか
おしやり、保健室の中を見渡した。

「すみません、先生、体調が悪くなった・・その女の子がいるんですけど」
保健室にはだれもいなく
窓でカーテンが風と光を含み波のように揺れている。
「すみませーん!先生ー!!・・・・まいったな・・。」

先生が不在であることを確信し
とりあえずベットに寝かせようとボク。
片手での限界まで布団をめくり
重さになれてしまったせいか
綿のようにかるく思える谷町を
ベットへ座らせた。

「大丈夫か?横になるか?先生いないみたいだから呼んでくるよ。」
「うん、片山君ありがとう・・・。」

初めて名前を呼ばれた。
今日のことが無い限り名前を呼び合うこともなかっただろう。
「い、いや、気にするなよ。さ、横になりなよ。」

かるくうなずくと足を布団の隙間に静かに滑り込ませ
少しずつ状態を倒していった。
「じゃあ、先生を呼んでくるから。ちょっと待っててくれ。」
入り口へ振り返ったとき
ボクの右手を強く握ったのは谷町の白い手だった。

「片山君・・・本当にありがとう・・・。」
「い、いやべつにいいって。とりあえず先生呼んでくるから。」
「うん・・・・。」

保健室を出て職員室へ向かう。
「すみませんーっん、保健室に先生がいないのですが!」
職員室には誰もおらず
目に留まるものは天井に据え付けられた首を振り続ける扇風機と
その風で揺れ動く観葉植物だけだった。

「まいったな・・・・・。」
それ以上どこを探していいものかわからず
とりあえず谷町のもとへ足を進めながら手を握られたことを
鮮やかにおもいだした。
「谷町の手・・・つめたかったな・・・。」
初めて意識する女性の手。
心がときめくというよりむしろ
その感触に愛おしさを感じた。

「谷町、ごめん先生が見つからないんだ。」
「そう、ありがとう・・。片山君もう教室に戻って・・・
勉強しなくちゃ・・・。」
「い、いや、ホ、ホラ俺頭悪いだろ!だから教室に戻りたくねーし!
それよりなにか頭かなにか冷やしたいだろ!ちょっと探してみる!」


「片山君はやさしいよ」
「・・・・・。」


棚に積み上げてあったガーゼを見つけた。

太陽とスイカ 下

そのガーゼに無言で水をふくませおでこにそっと添えた。
もう一枚のガーゼでかるく顔を拭いた。

「どう?」
「つめたくて・・気持ちいい・・・。」
「・・よかった。」

さっきまで聞こえていなかったのだろうか
今年初めて蝉の声が聞こえる。
この暑さで重くのしかかる空気の隙間をぬって
耳をつんざくその声は
ボクを現実の世界へと引き戻した。

(あんなこと・・・なんで躊躇も無く自然にできたんだろう・・)
ボクは谷町から離れたけれど声でその距離を保った。
「もう、夏がくるな・・。」
ボクは丸いすをベットの近くに移動し蝉の鳴く樹に目をやった。

「私、夏が一番すき。体弱いから太陽は苦手だけど・・・」
「苦手だけど?」
「スイカが大好きだから 夏がだーい好き。」

こんな色の時間を過ごしたことはかつてなく
なにかをこんなに美しく思ったことはない。
美しいとはこういうことなのだろうか。

谷町の涼しい感想はボクのこころを隙間なくかけぬけ
目からこぼれ落ちそうにさせた。


しずかに目をつぶったままの谷町の
そのかすかにはにかんだそのしわに窓から光で影が落ちている。
女の子とかではなく
ただただ引き込まれる谷町の
かすかにはにかんだ頬には
見たことも無く大きい
カメムシがとまっていた。

2008年7月7日月曜日

2080 貴重な一粒 上

この一粒の種を運ぶのが私の仕事。
種を受け取ってからもう何年経つであろう。
届け先にあと数十キロまでたどり着いた。
満身創痍だ。

日本から植物が減少し始めてもう61年。
滅多に見かけないものとなった。
減少の理由は種子が見当たらないとのことだ。
シードバンクも底をついた。

この奇跡的に発見された小さな種を
安全に運ぶのが私の仕事だ。

一般道や公共機関を使用すると
強奪などうにあう危険性が高い。
いまでは水以上の価値となっている。

山をかき分け
川をくだり
人目を忍んで
やっとここまでたどり着いた。

目の前にそびえる壁。
この中の研究機関は最高機密の施設。
認証を終え足早に進む。

「おお、まっていたぞ!疲労困憊だろう。ささ、とりあえず休んでくれ!」
「いいえ、それよりもまずこの種を早く!」
「そうか、わかった!おい研究員をよんでくれ!いますぐに保存カプセルが届くぞ!」
「ありがとうございます。責務が果たせ満足です!」
「いやいや、君にはこれからこの種を研究してもらわなければならないのだから、
休む暇なんて無いぞ!はっはっは!」
「そうですね。この一粒は日本の、いや!地球の希望なのです!カプセルはまだですか!」
「まあまあ、そう慌てるな。研究には休息も必要だぞ!ああ、届いたようだ。」

「さあ、このカプセルでとりあえず冷凍保存を。さあ、希望の種を!」
「はい!これです!」
「ありがとう!これで地球は救われるよ!まあ、とりあえず休んでくれ!」

一体どれだけ眠っていたのだろう。
深い眠りから突然引き戻されたのであった。

「大変です!種子が!種子が!」
「一体どうしたんだ!」
「種子は、種子は・・・・種子ではなかったんです!!」
「そんなばかな!何を言っているんだ!私に見せてみろ!」
「はい!!」

騒然としている研究室へ着衣も乱れたまま飛び込んだ。

「どこにあるんだ種子は!」
「こ、こちらに・・・この顕微鏡です。」

私は機器の前に座っていた研究員を押しのけ
息を落ちつけ顕微鏡を覗き込んだ。


「これは・・・・ハナクソか?」

2080 貴重な一粒 下

「一体どうなっているんだ!これは!」
「それはこちらが聞きたいですよ!あなたが持ちこまれて
すぐにこの保存用カプセルに封印したのですから
間違うはずはありません!」
「ではなにか!私が何年もかかりハナクソを運んでいたとでも言いたいのか!」
「いえ・・・そういう訳では・・・。」
「いや、そういっているも同じだ!ああ、そうだよ!ハナクソを大切に運んだんだよ!
誰のものかも分からずにな!!」
「お、落ち着いてください!よく思い出してみてください。どこかでハナクソにかわったと思われる出来事はありませんでしたか?」
「数年の間だぞ!すべてを記憶しているものか!」
「よ〜く思い出してみてください。携帯用かプゼルから出されたこと等はありませんでしたか?」
「保存カプセルから出したことなんて無い・・・そ、そういえば・・・。」
「なにか心当たりが?」
「いや・・なに・・・私も種子なんて生まれてこのかた一度も見たことが無くてな・・。」
「カプセルを開けられたのですね?」
「・・・ああ。」
「ですが、それだけでしたら紛失することは無いと思うのですが。他に何か心当たりはありませんか?」

「いや・・そのときにだな・・そのときに・・・え〜っと・・・」
「どうされたのですが?」
「いや、あまりにもハナクソに似ていたので、並べて比べてみたんだよ・・・。そっくりだな〜って。」
「まさか・・・・。」
「間違えて・・・・ポイ・・・・。」
「な・・・なんてことを・・・・人類の希望が・・・。」

「・・・・・・・ゴメン・・。」

「おお、やっと起きたのか!五日間も寝ていたのだぞ!起きたらすぐに研究とは!研究者の鏡だな!」

所長が防菌室へ入ってきた。
慌てるスタッフ。

「さて、どうだい?命に代えて運んできた希望の粒は?」
「え、ああ・・・あの〜・・・その、すばらし状態ですね!」

「そうか!ぜひ私にも見せてくれ!」
「あのちょっと・・・・!」

顕微鏡を覗き込む所長。

「こ、これが種子か!まるでハナクソみたいだな!いや失敬失敬。研究を頼んだよ!」
「は、はい!かしこまりました!」

「どうしますか・・・。」
「どうするって・・・仕方が無いだろう・・・。ハナクソなんだから・・・。」
「とりあえず研究しますか・・・・・?」
「・・・・ああ・・・・。」

2年後。
所長が全世界に向けて衝撃的な発表を行った。
「我々チームは植物の培養に成功した!これで地球は救われる!」

2008年7月2日水曜日

10秒ルール

10秒以内に次の質問の回答となるものを5つ答えなさい。

質問:
妻の名前

ボクはどこへいきたいのか。

転々と
腰をおろした場所は
すべて道端に思えてならない

つとめ先より帰るその道すがら
つぎの場所のことを考える

ふるさとはないと思っていた

決められた混雑のなかに
懐かしい訛に耳がとまる

母の背中で戯れる
懐かしい訛はその頃のものだ

ああ、あそこには戻れないのだな

ああ、坂道を転がって傷だらけだ。
ああ、オロナインオロナイン
ああ、ガッティ〜ン!

ボクはどこへいきたいのか。