2007年5月11日金曜日

兄と弟




貧しい幼少時代の夢の話。ボクあ小学一年生ぐらい。兄は3つ上のため4,5年生だろう。学校の友達と同じようなおねだりは言えなかった。言わなかった。子供ながらに親に気を使っている。
そんなある日、父親が会社から早めの帰宅。玄関をはいるなり、「木下大サーカスのチケットをもらったぞお前らっ!!!次の日曜日だぞ!」してやったり顔で部屋にダイブしてきた。2枚のサーカスのチケットが握られていた。ボクと兄は盆と正月、もひとつ盆がきたようにカーテンを引きちぎらんばかりの喜びだったが、部屋のカーテンはとうに捨てられていた。丸見えの部屋の様子はまさにサーカスだろう。
一日千秋。いよいよサーカスの朝。母は、いつもより豪華なお弁当と行き帰りの電車賃を持たせてくれた。どちらもあたたかい。とりあえず、お金は兄に預ける。2人だけで電車に乗るのも初めて。だがボクとしては兄がいれば安心だった。頭の中は「木下木下木下木上木上上上下下左右左右BA」の一色。
サーカスの会場に着く。兄の後ろに隠れ、エントランスへと歩いていく。「ようこそ木下大サーカスへ!」ピエロのお姉さんが迎えてくれた。少し緊張の面持ちで、「この・・・」ともごもごと2枚のチケットを兄は差し出した。兄は早く見たい気持ちを抑えられず、ボクの手を引いて中に入ろうとした。「ちょっと待って!」と後ろから声がした。さっきのピエロのお姉さんだった。ボク等2人はキョトン。「ごめんね〜、これは割引券だから入れないのよ〜」「え・・・・」と兄。兄の不安な様子でボクの不安はさらに倍。行き帰りの電車賃以外余分なお金はない。兄の後ろを少し距離をおいてついていった。岡山駅の噴水のところでお弁当のふたを開ける。ウインナーが3本入っていた。もちろん無言。お弁当の味もよくわからなかった。
券売機で切符を買った。ぴったりお金はなくなった。電車にのり駅に着いた。兄は家に帰ろうとはしなかった。ぶらぶらと歩きまわる。
怒っているのかな〜、と兄が怖い。ボクは歩き疲れてしゃがみ込んだ。すると兄もしゃがんでボ〜ッとしている。そんなことを繰り返し、「そろそろ家に帰ろうか。」と兄がいい、足を家へ向けた。
玄関の前まで帰ってきた。すると兄は小さく「よし」と言った。
とびだしてきた父はしてやったり顔で「どうだったっ!楽しかったかっ!」
兄は言った。「とっても楽しかった!!ありがとうお父さんっ!!」

なんで嘘をつくのだろう・・・?